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苧麻について

苧麻(ちょま)は、イラクサ科の多年生草木です。東南アジア原産で、亜熱帯から湿地帯に広く分布し、草丈は1.5〜2.5mになります。 繊維は、茎の靭皮部にあり、刈り取り後に剥皮し、陰干しを行う事で青苧(あおそ・グリーミラー)になります。また、採取した繊維は、「葉の裏 に白毛がある白葉苧麻」と「葉の裏に毛が無い緑葉苧麻」の2種類に分類され、短繊維の長さは70〜300mm、太さは18〜30μ(約5d)に なります。
伝統的な糸の作り方は、苧麻の茎を細く砕き、苧績みによって糸にし、糸を取り出しますが、現在の紡績工場では化学精錬し、短繊維を 取り出し紡績原料にしています。日本では「からむし・まお・からそ」と呼ばれ、麻織物として日常的に活用されていました。
「からむし」の名前の由来は、「から」は韓国の古代王朝である加羅を意味し、「むし」は朝鮮語のmosi(苧)です。縄文時代後期に、 中国大陸から朝鮮半島を経て日本へ伝わったと考えられています。また、越後縮の原料でもある「からむし」は奈良時代に越後へと伝わったと 言われ、江戸時代以前より越後で盛んに栽培されていました。大正時代には、中国から多量輸入され品種改良され、「苧麻」と呼ばれるようにな りました。
現在は、福島県昭和村で「苧麻栽培から青苧作り」が行われ、「糸績み」は魚沼地方で行われ、宮古上布や越後上布などの上布に使用す る細い繊維として使用されています。代表的な上布産地は、小千谷縮・越後上布・宮古上布・八重山上布です。これらの上布産地では、国内での 「手績み糸(苧麻糸)」及び東南アジアや中国からの輸入ラミー紡績糸を原材料とし、織物製品を生産しています。国内の「手績み糸」の生産は、 農家による苧麻の栽培・刈り取り工程・苧引き・加工工程・糸績みの工程に大別されます。
福島・昭和村で生産された苧麻糸は、小千谷産地へ供給され、宮古島や石垣島の苧麻糸は、島内の織物事業者を中心に供給されています。 しかし、手績みの苧麻糸は糸績み人材等の減少や高齢化等で生産基盤が大きく低下し、上布に必要となる細い糸を紡げる熟練人材が減少しています。 よって、文化庁による伝統技術保存会や地元自治体による人材育成・研修などの支援を受け、昭和村や宮古島では苧麻の栽培から苧引き・加工、糸 績みまでの人材拡大を行い、一定の生産基盤を維持しています。そして、ラミー紡績糸はフィリピンやマレーシア・中国等海外で生産されたラミー 原麻を麻紡績メーカーが購入し、調合・紡績しラミー紡績糸として供給しています。