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下村ねん糸では、作家さん・染織産地の織元さん・組合の方々・染織学校や工房の生徒さん 等 個人のお客様を有しています。業界はどんどん減少していますが、個人的な趣味とか作家活動を続けている方々は増えているように思います。下村ねん糸では、その様な方々を対象とし撚糸・絹糸販売を行いますが、これは家内工業としているから成り立っています。人を雇っていますと、仕事の絶対量が減少している中、嫌でも無理をして仕事を取らなければなりません。人を雇っての仕事では大変だと思っています。
現在の作家さんの織物は、同一では無く「一品物」を織り上げています。それは違う意味で時代のニーズに合っている。このニーズは、増加するという事では無く途切れる事は無いでしょう。下村ねん糸は、昔からこのニーズに合わせた撚糸・絹糸を提供して来ました。沖縄 等 手織りの産地・草木染の方々対象に、原糸を製糸依頼し、用途に合った独自の撚糸を行い、絹糸を提供しています。また、繭・糸・道具類に至るまで一連の情報を発信する事も下村の役割と思っています。そして、時間が許せば復元・再現という文化面での貢献が出来ればと考えています。

「竹筬研究会について」

竹筬は、織機で使用する竹でできた道具です。現在は手織り機で経糸を整えて、緯糸を真直ぐ打ち込んでいく為の道具です。最近では、機械生産の金筬が出回りその存在が注目度を失いつつあります。動力で動く力織機の発明に伴い、金属製の金筬が使用される様になりました。コスト面も価格競争・生産性・耐久性で格段の差が生じ、竹筬が押されていきます。そして、製造関係の廃業により竹筬に従事する職人がいなくなりました。
竹筬と金筬との違いを聞かれますが、一つには不規則な太さの糸には金筬よりも竹筬は優位性が有るという事です。硬い金属の筬は、糸が膨らんだ部分に沿って逃げずに(しなりが甘く)糸を削ってしまう場合があります。竹の筬の場合には、竹のしなり度合いが高く、糸の膨らんだ部分を柔軟に逃がします。よって、糸の傷になりにくいのです。また静電気も起こらず、水分と接してもさびない、光の反射が少ない、経糸を通す時の目の疲れが少ないなどが竹筬の優位性として挙げられます。
展示 等を通じて皆さんにお伝えしたい事は、竹筬という道具が危機的状況に有る事です。
竹筬は、産業的には一度途絶え、「日本竹筬研究会」が伝承しています。しかし、以前の様な産業ベースとしての復興という事は困難で、職人が職人を育て上げるには難しい現実です。産業ベースとするには、産業構造が変化している点にあります。以前の職人が行なっていた分業を統合・把握し、1人の人がいくつもの工程を兼任可能な技術と知識をマスターしなければならない時代です。金銭的にも、これらの技術・知識をマスターしても専業として行う事は出来ません。
今後は、理想を追い求めるのではなく、「竹筬という技術・知識」を継承していく事が重要な目的であり、少なくとも次世代に伝える事を念頭に活動して行かねばなりません。
そして、「筬羽」が無ければ「織物文化」存在しなかった時代背景を伝えていかなければなりません。