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絹(シルク)と蚕と人との歴史


絹は蚕の繭から繭糸を繰り取って、糸を作り出します。蚕が「自分自身の身」を守る住処として作った繭を、人が繊維として利用する事を見つけて家畜化(クワの葉を食べて実用的な繭を作る)した絹糸昆虫であり、これを家蚕と呼びます。 養蚕の起源は中国で、約5000年前からと言われ、その交易ルートがシルクロードの起源でもありました。そして、自然の中で生育し、桑の葉では無く、山野のクヌギ、コナラ、カシワ、蒿柳などのほか、シラカシ、アラカシ、スダジイ、マテバシイなどの葉を食 べて成長する野生絹糸昆虫を野蚕と呼びます。

*日本への伝来の歴史
「魏志倭人伝」に蚕から糸を紡ぎ絹織物を作った事が書かれており、239年には魏の明帝に卑弥呼が国産の絹を献上した事が記されています。最も古い絹が、弥生時代中期の遺跡から発掘されている事から、弥生時代の中期頃にはすでに北九州において養蚕が行われ、かつ楽浪 系の三眠蚕が飼育されていたと言われています。あるいは四眠性の蚕も一部飼育されていたかもしれません。




家 蚕
文字通り人が室内で桑の葉を与え飼育する蚕です。一般に流通しているシルクのほとんどがこの「家蚕」です。古代中国で糸を作るために蚕を家畜化したのがその起源で、生物学的には「カイコガ科」に所属します。日本では、より飼育し易く、多くの絹が得られる様に、 家蚕にはいろいろな品種改良が施されてきました。そして改良の結果、1個の繭から取れる繊維の長さは実に約1,500メートルにも及んでいます。近年、名前のある繭(あけぼの・世紀21・新小石丸・ぐんま200 等)での「ブランド生糸」の生産が行なわれています。 現代の蚕は、飛ぶ事も出来ない絹を作るだけの昆虫になってしまい生物として少し変という感じがしないでもありません。しかし、蚕は最も管理された生物で、今後は、糸よりバイオの世界で注目研究される存在となりつつあります。